そこにはかつて、召喚士達の住居があった。 海に沈む夕日を堪能できる特等席だった丘は、あの闘いで焼かれ、廃虚となってしまった。 燃え残った石柱。すすけた壁。草むした石畳。 そんなものが幽かにヒトの気配を残すその場所は、冒険好きの子供たちでさえ近寄らない。 日没時、夕日を背景に黒々と立ち上がる残がいの目立つその場所のことを…… 島民は「夕闇の墓標」と呼んでいる。
その日その場所が戦場に選ばれたことを、護人たちは程度の差こそあれ「不吉」と感じた。 そのはずだった。しかし。 それなら、今眼の前に広がっているこの光景は何だろう。 爛れた錆色の重さに耐えかねたように、その身を海に沈めようとしている夕陽。 時刻はちょうど凪にさしかかり、風がふつりと止まった中によどむ……血の匂い。 護人達は知っている。 「そんな。……にんげんが……あんなふうに…………」 かろうじて呟いた少年が、その場に激しく嘔吐する。 それでも彼の心が砕けてしまわなかったのは……。 「どーしてこんなひどいことするですかっ!!」 甲高い声が、先生の頭上から降ってきた。 「マルルゥ?」 驚いたレックスが伸ばした手を、彼女は軽やかにすり抜けた。 「たいちょーさんの仲間さん、痛がってます! あやまるですよ! 島の皆にも!」 オルドレイクは鼻先で笑った。小妖精の言葉など、耳に入れる気もないのだろう。
「悪い子はお仕置きですよ、ハゲハゲさん!!!」
……………………ひゅぅぅぅぅ。 (は、はげ?!) 「……おーい、マルルゥ?」 振り返りもせず、マルルゥは厳かな口調で断言した。 必死で息を詰めたのは、オルドレイクの背後に控えていた戦闘員達である。 そのためにすることはだた一つ。全員、死ぬ気で笑いの衝動を押さえる羽目になった。 かくして。 そのとき、不気味に静まり返って集団の中から、小柄な人影が歩み出てきた。 ……フォローになってないですツェリーヌさん。ってーか、ハゲは確定ですか。 「だまってちゃダメなのですハゲハゲさん!」 子供の喧嘩である。 そのとき、ウィゼルがオルドレイクの背後から静かに告げた。 火を噴きそうな視線で睨まれても動じず、ウィゼルは前を指さした。 「……」言葉に詰まるオルドレイク。 爆笑の波動が篭りまくった魔剣。 「わかった。一同、退くぞ!!」
その場を納めた功労者はマルルゥだろう。 彼女はその日、「あんなヤバいやつにつっかかるな」と
おわり
い・い・わ・け 1,2からプレイしている人は、ヤングオルドレイクに驚いたそうですが、3からの私は攻略本でオールドオルドレイクの生え際に笑……じゃなくて、びっくりしたのです。 この後どうなったかは責任を持ちません(^^;) 文頭でシリアスだと期待した方、ごめんなさい。
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